幼少期から記憶力が良い方ではなかった私。
いろんな感情や思い出を記憶の中から引き出す事が苦手でした。
そのために人と仲良くなれなかったり理解してもらえなかったりする中で記憶を呼び起こす鍵となってくれたのが”写真”でした。
写真に触れた瞬間にフラッシュバックする記憶と感情、この感覚が私にとってニヤニヤしてしまうぐらい特別な感覚になっていった。

私は人や物など色々な事に対して”距離感”という疑問を抱いる。
写真で言えば自分自身で撮影した写真を印刷し額縁に入れ部屋の壁に飾る。
この工程を経るにつれて写真と私との距離感が離れていくような感覚になるのです。
この感覚が撮影してからの時間が経つにつれて価値を帯びているからなのか、それとも額縁に入れ壁にかける事で物理的な距離感が生まれるのか等いつも考え新たな価値観を得ています。

2020年のある日、実家から祖母の訃報の知らせがあり、祖父から渡されたのが私たち兄弟の写った写真でした。
認知症のあった祖母が最後の最後まで肌身離さず大切にもっていた写真が役25年越しに私の手元に届いたのです。
大きな愛情を注いでくれた祖母に対し若かった私は無表情に冷たい態度をとっていました。この写真を手にした時データでは感じられないたくさんの感情を受け取り、あの頃の自分に馬鹿野郎と言いたい。

現在では写真に対して質感や手触りを求めるようになりカラーではなく質感を感じやすいモノクロ撮影を選び、データだけではなく印刷する事で現物に触れるということに取り組んでいます。
モノクロの感覚を是非体感していただきたい。
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